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ゲーム中心の雑記。Kenshi奴隷スタートシナリオロールプレイ日記連載開始しました!

【Kenshi】ロールプレイ日記 1-4 砂の海に潜む

「そういえばここはオクランの腕っていう土地名だったのを今思い出したわ。軍事基地もこの近くにあったはず……今更思い出したことだけど」

「またHNのパラディン共が来るってこと?」

「そういうことだ……いてて、ようやく角が戻ってきたというのにまた折られかねん」

「そういや私たちも髪が戻ってきたわね。いよいよ奴隷バレの心配もなくなりそうよ。大きな町に行ってもよさそうね」*1

誰かが設営していったのであろうキャンプ跡地。人気はおらず、あたりに散らばるHNの兵が散らばっているのみである。あれだけ騒がしかった戦場は今砂を伴った風切り音しか聞こえない。

とはいえ、それは今現在の話。HNの兵の巡回ルートにここがあるのならば留まったところで目を付けられるのは想像に易い。

「ところで……泡ちゃんなにやってるの?」

「死体漁り」

「見かけによらずたくましいな……」

「なにかいいものあった?」

泡は休憩もそこそこに息絶えたHNの兵漁っていた。

「鎧は持ち運び難しい……こいつらいいのあんまりもってない。」

「遠征じゃなくて近場の巡回ってところだろうしね。武器だけもっていけばいいんじゃない?」

「うーん……あっ」

鎧の内側を漁っているとメモ帳のようなものを見つけた。

「なにか書いてある……リバース鉱山、奴隷ってあたしたちのことかな」

「メモ帳?なにかしら……」

「銀髪の少女、28800cat、青髪の首謀者、70000cat 必ずとらえろ……?」

泡は目を丸くし、沫は目を細めた。

「賞金首ってことか?」

「賞金首……? お尋ね者?」

「そういうことよ。自首するかHN滅ぼせば解放されるわ」

「HNを滅ぼす……?」

大国からの高額賞金首。

沫は口調を変えず、元から頭の中にあったかのように続けた。

「まぁでも……しばらくはHNが手を出せないようなところで過ごすつもり。味方ではないけどいくらかマシなところよ」

 

都市連合(以下UC)という組織がある。現大陸の歴史、技術を守り、新たな技術へ発展していく都市の集まり。大陸の東側の砂漠地帯を中心に多くの都市を包括しており、全てまとめて帝国ともいう。幾度にわたって崩壊した帝国の3代目であり、歴史は繰り返そうとされている。

 

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「沫はここの出身なの?」

「このヘフト出身ではないけどね。都市連合は広いけど中心地はこの砂漠地帯なのよ」

大陸の東側から南、多くの都市が属し、その全ての都市に1人の貴族が当主として仕切っている。富を競い、貧困こそ悪徳と宣い、侍らせる戦士の強さが貴族のステータスという価値観の元、明日の飯も保証できない農民との格差を広げ続けている。十数年前の飢饉を端に発する帝国の腐敗の象徴だ。

この国にも奴隷制度はある。ホーリーネーションの奴隷制度とは違い経済基盤を築く国の資源となっており、飢えとの恐怖と隣り合わせの人々の支えになっている。ただ奴隷という人権無視した制度ゆえに主に農民の反乱が絶えず、奴隷制度に異議を唱える人々のテロ行為もあり、国の生命線でありながら国の存続を脅かす火種ともなっている。貴族たちの不満と恐怖のはけ口にも奴隷が使われ、それが反乱やテロを煽る材料にもなり、帝国のもろさを晒す結果となる。*2

更に西にはHNがいる。軍事拠点を構えた大国と一触即発の危険な外交事情もあり、今後の帝国の行く末は指導者の舵取りにかかっていた。

 

「貴族には極力近づかない方がいいわ。難癖付けて農民をクロスボウで射抜いたりする野蛮な輩よ」

「この国も平和に暮らせそうにはないな……」

 

砂漠を横断した沫達は都市連合の首都ヘフトにやってきていた。領地の端に立つ監視塔のような建物に黒づくめの服を着た野盗集団のアジトがある。沫は真っ先にそこを訪れていた。

「ハロー。私たちを盗賊団に入れてくれないかしら?」

「なんなんだお前」

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シノビ盗賊団という組織だ。成り立ちこそ不明だが各都市にアジトを構え、盗品の管理や流通を行っている。基本的にはアジトで過ごしており、たまに街の酒場に数人で飲みに行っていたり、流離っているところを目撃されている。*3


「別にいいが、力を示すために10000cat支払え。それが会費だ」


「1万……これでどう?」


HNの兵からかっぱらった装備と浮浪忍者の村にいたときからの貯金で確保できていた。こんなところで邪魔者は役立っていたということだ。


「結構。アジトの設備は自由に使ってくれ。ようこそシノビ盗賊団へ!」

 

沫と盗賊団のボスが握手をした。

 

「ところで頭領さん、ここから手っ取り早く稼ぐにはどうしたらいいのかしら?」

「真面目な奴なら回りの鉱山から鉱石を採取したりスキマー*4の爪を売ったりしているが、やっぱり店や貴族の家に忍び込むのがいいだろうな。盗品の売買ならまかせてくれ」

「沫……あたしの得意分野って?」

「そういうことよ。憲兵に見つからないように盗みを働いてお金を集めて。ここで狩り拠点を作ってお金と資材を集め、街の外に私たちの拠点を作りましょう」

「あなたの計画って……そういうことか。それで仲間を集めて……」

「とりあえずHNに奴隷解消後のお礼参りといこうかしらね」

沫の狙いをまとめよう。

ヘフトの空き家を買ってそこに資材や装備品、人材を蓄える。いい具合になったらこの砂漠地帯のどこかに拠点を立てる。施設と人材の拡充を進め、兵力が充実して来たらHNへ戦争をふっかけるということだ。しばらくはUCの街々に忍び込み、金を稼いでいくことになる。そのためにはある程度UCの圧力に耐える必要はあるが、HNを経験した彼女らからしたら女性やシェクというだけで迫害されたことを考えたとき、幾分かマシと考えた。

「盗みか……どうしてもやらなくてはならないのか」

「それは泡と私がやるわ。あなたは戦力として一番期待したいから、ボディーガードを頼むわ。あとは街の外の鉱山を利用して身体を鍛えるのもいいかもよ」

「それでいいなら助かる。正直盗みはいい気持ちがしなかったが……HNに復讐を考えてる私が何言ってるんだろうな」

「私達は正義の味方にはならないわ。流れ者でしかない私たちの居場所のため、邪魔になるものは全て滅ぼす。差別と暴力、迫害だらけのこの世界で自分を守るために私はこの組織を完成させるわ!」

「……」

「……」

UCも安泰ではない。むしろHNよりも内憂外患がはっきりとした事情を今も昔も抱えている。自国民の腹も満たせない国が盤石なわけがない。むしろ踏み台にして成り上がろうとすら考えている。

「あたしは……沫がいなかったら今もリバースにいた。あたしも自分が安心できる場所が欲しい。沫に協力する」

「私も……あなたの行動がなければ今頃HNの兵共に転がされていた日々だ。私の命はあなたのものだ」

2人の言葉を受けた沫は深く呼吸をする。かつてないほどの高揚感。荒唐無稽な夢が少し届きそうな気がして、眩暈すら覚えた。

「私はこの大陸で無様に生きたくない。誰かに使われて生き延びるくらいならスキマーの餌になる。2人もそのつもりなら、私についてきて!」

「もちろんだ」

「うん」

荒れた大陸にまた一つ、分子が増えることとなった。

*1:逃走した奴隷であるかどうかバレる可能性は自身の格好による。奴隷になると人間なら男女問わず頭を丸められ、シェクなら角が折られる。各町の酒場にいることがある形成外科医に話しかけるとキャラエディット画面に移り、容姿を変えられるがその時に髪を生やしたり角を戻すこともでき、奴隷バレの可能性が減る。ついでに名前も変えられる。それ以外でも時間経過(元奴隷になってからゲーム内時間で96時間)で容姿が元に戻る。今回のプレイは後者のパターン。

*2:泡と沫に高額な賞金がついたのはリバース鉱山時代に奴隷を解放させまくったからだと思われる。ゲームシステム的にも奴隷の解放は資源の流出と同義で略奪や襲撃よりも大罪として認識される。

*3:盗賊団という物騒な連中だが基本的に敵対することはなく、1万catポンっと出すだけで同盟になれる上に50%オフ商品横流ししてくれたりアジト内のトレーニング器具使わせてくれたり、形成外科が使えるなど恩恵がでかすぎる。中盤以降でも安定した盗賊バックの供給先として使えるなど案外お世話になる。システム上プレイヤーが街で問題を起こすと加勢してくれるが特にUC連中との装備相性が悪く、商人含め全滅していることもあるかわいそうな集団

*4:でっかいカマドウマみたいなやつ。砂漠地帯全体に現れてプレイヤーに敵対する。斬撃ダメの重さから序盤に遭遇するとダウンからの通りすがりの奴隷商につかまって奴隷にされる砂漠特有のコンボを見せつけられる。街付近でスポーンすると衛兵にぼこられて沈黙してることがあるのでありがたく肉をもらおう。取れる食用肉の量は少ないが沸き数の多さから結果的に結構な量を稼げる

【Kenshi】ロールプレイ日記 1-3 世界の果て、オクランの果て

そのころ、HNのとある都市にて。

「リバース鉱山から脱出した奴隷は今どこにいる」

「鉱山を北上した後のを最後に行方が分かっていません。隠された森の方へ向かったものと思われます」

「小娘2人も捕まえられないのか!オクランの名前を汚すでない!」

「申し訳ございません! 何分奴らの逃げ足が速く、砲台での狙撃も敵いませんでした……。」

「お言葉ではありますが、ずいぶんとあの2人にご執心のようでありますね。ただの小娘ではありませんか」

「あそこにいる奴隷共の洗脳は完璧だ。過去にリバース鉱山からの脱出を決めたものも決まって単独犯だった。しかし今回は3人、それも2人が中心人物となってリバース鉱山全体の奴隷が大脱走、歩哨は逆襲されて囚われたのもあり鎮圧に時間がかかりすぎて工事計画が破綻寸前になった上、奴隷も余計に一人失ってしまった。」

「私共の不徳が致すところです。申し訳ありませんでした」

「処分はあの奴隷の捜索を済んでからだ。あれだけの悪行を積んだ女、きっとナルコの生まれ変わりそのものに違いない。その首に多大な金額をかけて、全国に指名手配だ」

「いくらかけるつもりなんですか?」

「そうだな……まだ決めていないが、あのモールよりはかけるつもりだ」

 

カニバル共にちょっかいをかけながら森を散策する一行。初めて握るクロスボウの扱いに難儀を極め、戦闘中の味方に誤射してしまうことも多々あった。

「走りながら撃つことができればいいのにね。足には自信があるんだから!」

「止まって撃ってもなかなか当たらないでしょ」

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少しずつ経験を積んでいき、隠された森での生活も3日が経った頃、沫はそろそろこの村を出発しようと考えていた。

「どこいくの」

「砂漠の方、帝国領の方へ向かうわ。あっちはここより色々と過酷だけど、物資は豊富だし人もいる。しばらくはどこかの都市に家でも借りて前準備をしましょ」

「準備?」

「それは追々説明するわ。あっちだとあなたのスキルも大活躍よ」

「それはたのしみ」

手荷物をまとめていたところに浮浪忍者の一人が寄ってくる。

「帝国領に行くのか?」

「まぁね。あちらにしばらく潜伏してHNを滅ぼす前準備をするつもりよ」

「そうか。帝国領に行く前にここから西の山中にある世界の果てっていう街がある。そこから先の街は帝国領に入るまでないからそこを中継地点にするといい」

「世界の果て?」

「オクランの像が門にあるからHNの街だと思ったんだが、門番にシェクやら女やらいたんだ。尋ねてみたんだがどうやらテックハンターの街らしい。詳しいことはわからんが、少なくとも行く価値はあるだろう」

「わかったわ。テックハンターね……ちょっと興味があるかも」

「テックハンターなら私たちに危害を加えてくるようなことはしないだろう。それに、以前見た遺跡について何か知っているかもしれない。私もちょっと興味出てきたな」

21日目の夜。3人は浮浪忍者の村を出発。情報の通り、村から西へ進み、山登り。すると忌々しい像が2つ鎮座しているところを発見した。一見するとHNの都市である。

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「一応ここもHN領に入るんだったな。テックハンターの人たちの街だとすれば、文句を言われないようにするためかもしれないな」

街にある店で浮浪忍者の村では不足していたものを購入、今一度準備を済ます。そして街の端にある大きな建物。街の人によると大学というらしい。

「そもそもテックハンターってなに?」

「泡は知らなかったのね。テックハンターのテックは技術、ハンターは狩りをする人。でもこの時代の技術は後退しているのよ。昔の滅びた帝国の方が技術は栄えていたの。それでテックハンターの人たちが求めているのは滅びた帝国の技術。それを探す人たちの集まりがテックハンター」

「要するにロストテクノロジーの探検家ってことだ。だから遺跡の調査もどこよりも進んでいる。彼らならあの遺跡のことも何か知っているはずだ」

「つまり強い人たちなのかな」

「おそらくね。まぁ、こことはあまり喧嘩したくないわ」*1

 

大学は一般公開もしているのか、特に咎められることなく進入することができた。しかし皆一様に忙しそうである。その中の一人、責任者のような人、フィンチとイヨから話を聞くことができた。

 

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Q1「ここは?」

A1「見ての通り大学だよ。古代の科学書の解析をして技術をよみがえらせるんだ」

Q2「テックハンターが解析もしてるの?」

A2「私たちはマシニストだよ。厳密には違う団体。役割分担って知ってる?あちらさんが資料を持ち帰ってきて、私たちがそれを解析。」

Q3「こんな辺鄙なとこに街を作ったの?」

A3「北方の拠点として作ったよ。遺跡は世界各地に散らばってるからね。南東にはブラックスクラッチっていうところもある。それと各所にウェイステーションっていう小型の拠点もあって、冒険者が補給しやすいようにしてるよ」

Q4「古代の科学書見せて」

A4「人のもの盗ったら泥棒だよ。」

Q5「科学書ってどこにあるの?」

A5「壁に耳あり障子に目ありって知ってる?自分で探してね。一応店にそれっぽいところの地図はあるからよろしくね」*2

Q6「なんで門にフェニックスの像おいてるの?」

A6「あいつらバカだからこれを置いたら満足して帰っていったよ。この施設みたらめっちゃ怒ってきそうだけど」

Q7「この世界のことなんか知ってる?」

A7「私は歴史学者じゃないよ。そもそもかいつまんだような説明で正しく理解できるほど単純じゃないよ。自分の足で史跡を回ったほうがいいんじゃないかな。図書館に本としてまとめたものがあるからそっち見た方が速いかも」

Q8「古代人はなんで絶滅したの?」

A8「何かの病気か大災害かじゃない?今いる人たちはそこの外にいた人たちの子孫だよ。そういう場合君たち人間は自分たち以外には極度に排他的になるね。それが今のHNを形作ってるとみてるよ」

Q9「スケルトンは数千年と生きてるんでしょ?詳しく知らないの?」

A9「君たちだって物忘れするでしょ?記憶なんて数百年持てばいい方だよ」

Q10「逆に質問するけど、私こう見えて忙しいんだけど」

A10「……いろいろ答えてくれてありがとうございました」

 

大学を後にし、世界の果ての門をくぐる。東方面に山を下っていくと徐々に植物がまばらになり、荒れ地の様相を表す。同時に日差しも熱くなってきた。

 

「この辺はまだHNの軍事基地があったはず。少数だけどパラディン共が巡回しているだろうから気を付けましょう。」

「山を下ったらさすがに疲れてきたな。どこかで休憩したいが」

「あそこなんかキャンプ跡みたいなのあるけど」

「そこで休憩……」

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「いたぞー!指名手配の奴隷だ!なんでもいいから奴を捕らえるんだ!」

「……ついに見つかったか。仕方ない。」

聞きたくはなかった声。パラディンの号令が下り、聖なる騎士団が一行を捕らえた。

カニバルで練習した成果を見せるわよ!」

「うん、敵を倒す」

「私がひきつける。2人は各個撃破してくれ」

ソトが自らタンク役を引き受け、兵を引き付ける。集中攻撃にさらされ、シェクの硬い皮膚に傷がつく。その程度では誇り高いシェクを止められない。

「こいつ……!元奴隷の分際で!」

「ほらほらどうしたァ! お前らの憎むべき異端者はこっちだぞ? もっとこい!全力で相手してやる!」

「邪悪の化身め!われら光の使者がその魂を浄化してくれ……ぐわっ!」

「一人アウト。あの出血量じゃしばらく立てないよ」

「しばらくどころか死んじゃうかもね」

3人と10人以上の兵隊。明らかな数的不利だが、クロスボウと引き付け役のシェク。さらにクロスボウコンビの逃げ足の速さによる引き打ちで数的不利を打ち消す。3人の奴隷を相手にHNの軍勢はみるみるうちに数を減らしていった。

「はぁはぁ……まだまだやれるぞ。お前の相手は私だ」

「もう虫の息じゃねえか。せめて楽にしてやる!」

パラディンの十字架*3がソトの脇腹に食い込み、その体躯が崩れた。それと同時に

「あんたもだよ」

首に突き刺さった一つの矢。それが致命傷となり、パラディンの身体もまた崩れた。

「今のがリーダーのような奴だったのかしらね。泡、ソトを保護しつつ残りを殲滅するわよ!」

「絶対に許さない」

司令塔を失い、指揮系統が崩れた軍勢は破れかぶれに残った2人をにらみつける。その足からも流血が酷く、体重を支えることが難しくなっている。がくがくと、震えが止まらない。

「くそが……!」

満身創痍となった軍勢は、次々に砂の海へ沈んていった。

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*1:古代の遺跡はステータス50~60平均の敵対生物やスケルトンなどがいる危険地帯であり、そこに赴く冒険家であることからテックハンターの人たちも各国の幹部レベルのステータスを誇る強者ぞろいである。その割にはHNは都市連合とは違い温厚な人たち。このゲームあるあるの温厚な人ほどとんでもなく強いパターンの典型

*2:マシニストの店の店員に話しかけると科学書のありかを聞く選択肢が出るが、全員一様に出し抜かれたら嫌だと教えてくれない。一丸となって技術発展に貢献していくと思いきや競争意識が高いようだ。

*3:HNの兵が主に装備している鉈武器という分類の武器。形状的には幅広のブロードソードみたいな見た目。鉈武器は刀身が分厚くできているのか他刃物と比べてだいぶ重量がある分打撃性能が非常に高く、重装甲相手にもダメージを通しやすい。HNの兵はこれか人切り包丁という鉈武器が標準装備。HNの怨敵であるロボットへの特攻もあり、とりわけパラディンの十字架は補正が50%もあるロボットスレイヤー

【Kenshi】ロールプレイ日記 1-2 放たれたものども

「!? だ、誰!?」

沫にとっては予定外だった。2人で脱出する以外に考えておらず、自身と同じく脱走を企てる奴隷がいたとして仮にも鍛えられた歩哨である彼らを撒いて脱出を成功させるほかの者がいると思っていなかった。自身の脱出の際に奴隷を解放させたのも真の狙いは歩哨への攪乱、利用したに過ぎなかった。

「あいつら案外どんくさいから、一人くらいは抜け出すと思ってたよ」

沫に比べて泡の口ぶりは淡々としたものだった。

寡黙を貫いていたその人は見下ろす視線を落とし、大柄な身体を小さくした。

「まずはあなたたちに感謝する。無益な日々と縁を切ることができた。不器用な私ではあの忌々しい枷ですら外すことができなかった」

薄紫色の硬質な肌。胸には沫と同じような膨らみがあるが、肩や背中に生える棘がローブ越しからでもわかるほどに存在感を放つ。何よりも頭に数本の突起。何かがおられたような跡は奴隷の証、誇りの喪失の証であることを2人は知っていた。

シェク。人間とは異なりながらもこの世界に住む住人の一人である。*1

「肥溜めに打ち捨てられた私に蜘蛛の糸が垂らされた。自分も生きるのに必死だったのにな。フラットスキンに突き落とされた地獄から掬い上げてくれたのはまたフラットスキンだった」

「そ、そう……? 私たちもそこまで考えてたわけでもないのだけど」

「なんでもいい、結果的に私はあの鉱山の束縛から解放されている。きっかけをくれたあなた達に感謝をしたい。私は何をすればいいんだ」

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フラットスキンを下に見る誇り高い種族がこうして首を垂れている。

沫は何か高揚感のようなものを感じざるを得なかった。

「私には夢がある。」

転がされる日々の中で頭に思い描いていたもの。決して口外してこなかったもの。夢物語と一蹴されそうなもの。

一人で生きてきた中でようやく手に出来そうなもの。

「しばらくこの国の兵は私たちを探すだろうけど、今自由を得た。そうしたら組織を作る。野盗なんてものじゃない、強大な組織。私や皆をコケにした者たちに復讐するの」

「そんなことできるの?」

「やるのよ。ここから先が厳しいかもしれないけど、やるの」

奴隷の日々の中でも決して光を失わなかったもの。心に巣食う復讐心。その炎が灯となり、この日を迎えた。それは今篝火となる。

「あなたたちは、ついてきてくれるよね?」

沫は二人を見据える。

「行くところがないから、沫についていくよ。あたしは」

当然とばかりに。泡は沫に身を寄せる。希薄な表情でも今回はどこか柔らかい。

「一度奴隷に堕ちた私はもう祖国には帰れない。貴女の夢をかなえる武器になろう」

角の無いシェクもまた、生まれ変わった気持ちだった。

リバースの外れ、2人に1人が加わり、勢力が芽吹くこととなる。

「ところで、あなたの名前は?」

「名乗る名前がない。とりあえずソトでいい」

 

それからの3人は鉱山の歩哨から小耳にはさんだ情報をもとに北へと逃走した。リバース鉱山の北、隠された森という地方に彼らにとっての敵である勢力がある。

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「リバース鉱山を逃れてきたのか。大したものだな」

浮浪忍者。HNの差別の被害者が集まり、レジスタンスとなった組織。リバース鉱山から逃れた人々も多く流れ着き、皆一様にHNへの恨みつらみが積もっている。*2

モールはその浮浪忍者の指導者である。浮浪忍者はHNの数少ない明確な敵対少数組織であり、そんな彼女には5万cat*3の賞金首がかけられている。

まずはこの組織に加担しようと考えた。

「今はまだ難しいけど、いづれかはあの国を滅ぼしましょう」

「良い心意気だ。浮浪忍者はあなたたちを歓迎しよう」

モールと沫が握手をする。浮浪忍者と手を組むということはHNと完全な敵対することになる。

「一応あなたの故郷だったわよね?本当にいい?」

「知らない、あんなとこ。それよりも荷物下ろしたいんだけど」

「ああそうね。お宝、ちょっと取引しましょうか」

浮浪忍者の村に来る前、リバース鉱山近くにあった遺跡から機械製品をいくつか持ちだしていた*4。これらをこの村の武具店で売りさばき、武器を調達する。泡と沫はクロスボウ*5を、ソトは板剣*6を取った。

「腕っぷしに自信がなくても逃げ足に自信があるならこいつがぴったりだぜ。当てる腕前は自分で鍛えな。そっちのシェクの姉ちゃんはでかい武器でいいんじゃねえか?」

店員のセールストークに乗せられつつ、武器を選んだ。

「ここはカニバルの徘徊区域でもあってな、力試しの相手にはちょうどいい。HNを倒す前に奴らで自分を鍛えるのもいいぜ」

カニバル? 人肉を食うやつらってこと?」

「そういうこった。人間のようだがこっちの話をまるで聞かねえで食材としか見てねえ奴らだ。ちょっと森をはいりゃ奴らのキャンプがある。興味があれば森を巡回すると言いぞ」

「そいつらとあなた方浮浪忍者は普段から戦っているのか?」

「まぁこっちを侵略しようとしてるからな。カニバル平原ってとこがあって、そこから来てる奴らなんだが……といっても追い払ってる程度だ。あんまりしつこいやつは殺してしまってる」

「じゃあそいつらでクロスボウの打ち方練習してくるね」

「あ、ちょっと泡! お姉さんありがとうございました!」

HNの連中でも手が出しづらい浮浪忍者の森を擁する隠された森。浮浪忍者は侵略するカニバルと戦いながらHNを打倒するため刀を研ぎすます。彼女らに匿ってもらいつつ、泡たちはしばらく浮浪忍者に混じってカニバルと戦うこととなった。

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時にはこんな大物にも出会った。

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「何この気持ち悪いの」

「私は聞いたことある。ビークシングって言ったか、生きたものでも食らう凶暴な肉食動物だ。昔何回かやりあったことがある。こいつらは基本群れで行動するんだがな」

「外はこんな凶暴な奴がいるのね。1匹だからなんとかなかったけど……カニバルにむしろ押し付けたいわ」

 

*1:身体的には記述の通り。ルーツは文明崩壊前にさかのぼるが詳しいことはわかっていない。寡黙で冗談が嫌い、身体の研鑽に重きを置き、何事にも武力で制するのが一番という脳筋種族。実際シェクは人間より戦闘能力的には大体優れていると言っていい。シェク王国という国があり、名前の通り全世界の種族人口の多くはその国にいる。シェクは人間をフラットスキンと罵り、後頭部から生やした角を誇りの証としている。角がおられたシェクとはそういうものだ。

*2:この世界の忍者は特定の主に仕える者は極少数で、軽装の歩兵や野盗という印象が強い。浮浪忍者でいえばHNから逃れ、世界のどの組織にも与せずただ打倒HNを掲げる軽装歩兵集団と言い換えてもいい。

*3:catとはこの世界の通貨のこと。5万catの首といえば大罪人としてその国に市民レベルで広く晒されていると思っていい。プレイしてると割と簡単に超えちゃうけど

*4:この世界の文明が滅びる前の遺構がここ以外にも全世界に残存しており、そこには当然当時の物が眠っている。現代では希少なものとなっているものもあり、当然高値で取引される。因みにハイテク技術を良しとしないHNでは禁制品となっているものばかりであり、所持しているところを見られたらしょっ引かれる。

*5:歩兵装備としてはこの世界唯一の遠距離攻撃手段。近距離戦闘を始めるとき、敵に近づくとお互いにすり足を始めるため、引き打ちし続ければ時間はかかれど完封してしまうことが可能。フレンドリーファイアしてしまうことと、重い防具ではクロスボウスキルに多大なマイナス補正がかかることから万能というほどでもないが、ある程度の格上も簡単に相手取ることができる。

*6:重武器というカテゴリの中の一つ。両手剣みたいな形状をしており、攻撃範囲と一撃に重きを置いた浪漫武器。一振りが重いのでタイマンは苦手だが、その攻撃範囲から敵集団にまとめて負担をかける手段となる。力ないキャラには使いこなせなせず、限界まで筋力を上げても使いこなせないものもあり、その場合はサイボーグ化しなくてはならない

【Kenshi】ロールプレイ日記 1-1 終わりの始まり

リバース鉱山からの脱出。

沫にどんな思惑、目的があってそれを企てたかは泡を含めて知ったことではないが、とにかく二人の当面の目標となった。

それを達成するには奴隷を監督する歩哨の目を盗む、あるいは歩哨を撒けるほどの逃げ足を確保しなければならない。

今すぐ実行しようにも、二人は自身の身体が思った以上に動かない現実を思い知った。

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あっさりつかまり、奴隷の証を刻み込まれる。

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自身の限界を知ったところで、2人は何が必要か話し合った。

檻の鍵を容易く解除するピッキング*1、夜中傍を通られても認識しにくくなる隠密*2、邪魔な見張りを最低限排除する暗殺*3、もし見つかっても追いつかれない運動能力*4。これらを鍛えることが最優先だと気づいた。

足を折られたり

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罵声を浴びせられたり

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労働をしない2人に対する歩哨の怒りは冷めることはなかった。

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いくら叩いても、痛めつけて牢屋に入れ、ある程度反省させたら再び働かせても、奴隷2人はどうしてもつるはしを握らなかった。まるで鍔迫り合いをしているかのような膠着状態、痛めつけることはできても殺すことはできない以上、2人の立ち回りは歩哨全体にとっての頭痛の種に成り代わっていっていた。

それを知ってか知らずか、2人は技術と体を鍛えていく。お腹が空けば歩哨の持ち物に手を出した。傷を治してくれないなら包帯も奪った。

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悪事も重ねながら、2週間でここまで育った。

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脱出を意識し始めたのはこのあたりからだった。ピッキングの練習ついでに他奴隷の檻の鍵と枷も外し、鉱山全体に反逆ムードを漂わせる。このあたりから泡と沫はすきを見せた歩哨を気絶させることができるようになり、その歩哨から武器を取り上げて武装する奴隷も中にはいた。とはいえ、歩哨からの仕打ちが恐ろしいのか、オクラン教の再誕の話を信じ込んだのか、身柄を解放してもすぐに檻に引き籠る従順な奴隷もおり、奴隷も一枚岩ではないことを悟った。2人は2人の脱出を最優先とし、他奴隷は攪乱目的で解放すると決めた。考えの異なる奴隷たちをまとめるほどの余裕はないのだ。

限定的な状況ながら歩哨へも危害を加えられるようになった2人は、歩哨を気絶したらみぐるみを剥がし、自分たちにつけられていた枷だけを返して檻に入れた。枷をはめることはできても枷を解除することができないと悟った2人はこれが追っ手を減らす手段であると考えた。当然日ごろの恨みを返す目的も、恨み言を返す歩哨、檻から出してくれと懇願する歩哨に泡は何か高揚感のようなものを感じた。

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18日目。

「だいぶ歩哨もいなくなったけど、そろそろ脱出しない???」

「うん。でも、どこへ行くの?出たら」

「歩哨の話ではここの北の森のどこかに浮浪忍者の村があるらしいのよ。過去にも脱走された奴隷はそっちの村の勢力になったっていう話も聞くの。少しの間お邪魔するのもいいんじゃない?」

「あたしはよくわからないから、沫がいいならそれでいいよ」

「それじゃ、その前に奴隷たちをいま一度解放しましょ」

 

真夜中。囚人用ポールを回り、奴隷にかけられた鍵をすべて解除していく。特に足が動きにくい時など、開錠の経験は深く積んだ。この世界の鍵は殆ど開錠できるという自負はある。

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当然無視。気づけば囚人用ポールに吊り下げられている屈強な体をした奴隷の数が増えた気がする。飯も食えない状況でこの歩哨共が飢えていく様を見るのも楽しそうであった。

門前の警備は流石に手厚かった。後ろを歩いていた奴隷の姿がばれ、それを皮切りに泡と沫は全力疾走。ただ後ろから追いかけてくるような連中がこの二人にタッチすることなどかなわなかった。

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「むしろちょっと準備しすぎたかしらね。でもまぁ、久しぶりの娑婆の空気よ。きもちいいわ……」

鉱山の頂、採掘場とせわしなく動く粒を見下ろす。一層晴れやかな気分と朝焼け。地面を見下ろして、五体満足そうな影が3人分伸びている。

「うん、あっけなかった……それで、あなたは誰?」

*1:ピッキングはその名の通り鍵を工具なしで開ける技術のこと。スキルさえあればインベントリを占有する工具がいらないことが最大の利点。鍵にはレベルが存在し、最大レベルは100。この鍵が最低限開けられるようになるピッキングレベルが60であり、現在の2人のピッキングレベルは70ほど。確率は低めになるが開錠を繰り返せばいずれ開くということである。ちなみに開錠の成功率は90%が上限であり、失敗すると作業ゲージが空に戻ってもう一度作業やり直しとなる。デメリットはそれだけ。工具使おうがドア破壊しようがピッキングしようが見張りにばれれば当然犯罪行為となる

*2:隠密モードによる自身の姿の隠蔽率、賞金首や元奴隷であることがその勢力にバレるかどうかの確率が左右される。隠密レベルが高いと陽があたってないところで真横を通り過ぎても姿がばれることはほぼなくなる程度の強さ。後述の暗殺にもつなげられる

*3:日本語訳でそうなってしまってるが、実際には首にチョップして気絶させる、映画とかでたまに見るアレ。英語ではステルスノックアウトとなっているのでそちらの方がイメージしやすいかも

*4:移動速度のこと。重いものを持っていない状態でスプリントすれば上がる。敵対勢力に追いつかれないだけでこの世界での生存率は飛躍的に向上する。つまり生命線

【Kenshi】ロールプレイ日記0-1 石の海の誓い

お詫び。

書いているうちに段々と初期メンバーの前日譚となってしまい、ややプレイ日記とは異なる風味になってしまいましたが、ボツにするのがもったいないという判断からそのまま書き上げました。ということでキャラメイキングの延長線としてのキャラクターの出目紹介回ということでお一つ。本編開始は次回更新からです。多分、ウン。

 

 

 

ホーリーネーション

数千年の歴史を持つこの国が栄えた背景に、最高神オクランの物語がある。

光と闇の生命が互いに存在し、その二つの均衡が世界を形作る。この国以外の教えを受けた者であればそう答えるらしい。

この国では違う。最高神オクランは光の使者である。オクランの預言者である初代フェニックスはオクランの教えを説き、民衆へ広く伝えた。それが国家となった。

預言者フェニックスは死の際に人間の男の子としてこの世に再び生まれると予言し、子孫はそれがオクランの意志と受け取った。固く護られた予言は62代にまで渡り、現在も指導者として座している。

途方もない時間の流れによってオクラン教の教えはいつしか光の使者たちで世界を満たし、闇の存在を駆逐していくという教えに変わっていった。人間の男はオクランの使者とされ、世界を光に包む存在である。女は堕落の神であるナルコの化身とされ、激しい差別と犠牲の対象となった。人間の手によってのみ世界を救うとされ、機械による技術革新もこの国では御法度となった。とりわけスケルト*1は闇の象徴、世界を蝕む絶対悪とされ、かれらの殲滅によって世界は救済されると考えられている。

彼らが狂信するオクランがどれほどのものなのか、数千年にわたって語り継がれた現実を聞かされるだけで納得がいく。これほどの時間、国家が守り続けられたという実績だけでオクランの威光というものが知れるだろう。

 

あたしはまともな教育を受けていない以上、一部推察が入ってるし全て正しいかどうかはわからない。

ただ一つ言えるのは、この馬鹿でかい像を作るためだけにあたしは今人間でなくなっている。

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リバース鉱山。ホーリーネーション領にいるグリーンランダーの男以外が来世を信じて労働に励むところ。労働によって闇の存在であるあたしたちは来世で光に転ずることができる。そのように教えられている。偉大なるフェニックス62世像を作ることによって。

 

あたしは母の顔を知らない。あたしは父の顔をよく知らない。罵声と暴力の果て、迷い込んだ街はずれでうずくまるあたしに歩哨共が取り囲み、次に見えた景色はこの石鉱山だった。

 

今あたしがやっていることはこの鉱山で掘削作業をすること。これに歩哨の罵声が加わる。それだけで今の生活はここに来る前よりは案外マシなのだ。

 

彼女はそうじゃなかった。

 

あたしよりも後に来た背の高いスコーチランダーの女性。青くてきれいな髪をしていた。今はどんな人も奴隷の証として髪は剃られ、角は折られる。女の命を絶たれても、彼女の眼はどこまでも青く光っていた。

 

「こんな子供でも虐げられるのね。悪魔はどっちかしら」

 

あたしは彼女がつるはしを振り下ろしたところをほとんど見たことがなかった。何か取り繕うように振っているところはみたことあるが、とにかく彼女は彼らの言う堕落の神であった。

 

意味のない像を作り続ける毎日の中で、彼女の振る舞いにあたしは昔の生活を思い出した。家に寄り付かず、日々を生きるために窃盗を繰り返す毎日。女であるために自分の子供と扱われず、それ故に縛られるものはなかった。死んでもいいけど、自殺はしたくない。虐げられる理由が当時はわからなくて、ひたすら反発した。

 

彼女はひたすら鍛錬をしているように見えた。枷を多くつけて走り込み、時に同じ奴隷を気絶させたり、それを歩哨に試そうとして返り討ちに合っていたりした。そうしているうちにあたしが標的となる。

 

「私の暗殺術に気づくなんて……」

「変な人だとは、思ってた」

 

大言壮語もいいところだったけど、彼女の顔に冗談はなかった。真剣になにか経験を積もうとしていた。あたしにも見抜かれるくらいに未熟な技術が、逆に興味をそそられた。

 

「あなた、小さい割に経験を積んでいそうね。私にあなたの経験を教えて!」

 

初めての感覚だった。

 

「それをして、どうするの?」

「決まってるじゃない、こんなゴミ山を出て今度こそ自由になるのよ」

「来世があるかもしれないのに?」

「来世でも来世を待つつもり?」

 

あたしは手に持っていたつるはしを投げ捨てた。

 

「自由になったら、なにをしていい?」

「なんでもしていいのよ。でも、だれもあなたを助けてくれない。だから、あなたを助けてくれる人を探すの。私みたいにね」

「お姉さんはあたしを助けてくれる人?」

「いい響きねお姉さんって! あなたが私を助けてくれるなら勿論よ」

 

なんでもいい。拠り所が欲しかった。嘘でもいいから、安らげるところが欲しかった。あたしに興味を持ってくれる人なんて見たことなかった。

 

「いいよ。あたしがここに来る前にしていたことを教えてあげる。だから、外を案内して」

「やったぁ! そういえば、あなたの名前は?」

「……ええっと」

「じゃあお互いに別の名前で言い合おう。それでいいじゃない。生まれ変わった気分でね。rebirthって、なんだかHNにそそのかされたみたいだけど」

 

打ち捨てられたようなあたしに名前があってもだれも呼ばなかった。誇れない名前をかざすより、認めてくれた人に名前を付けてもらう方に温かさを感じた。

 

「あなたは泡。そして私は沫。世界から泡のように消えた私たちにはぴったりだと思うの」

「あたしもあなたもここにいるよ」

「ここにいる時点で人間としては一度死んでるわよ。ここを抜けて、もう一度泡としてよみがえるの」

 

後のBubble Nationの産声である。

 

*1:いわば機械人間。文明が滅びる前の帝国の技術の産物。現在の文明レベルでは制作不可能のロストテクノロジーとなっており、現存するものは数千年の歴史を持っていると言える。また彼らのような形をする義手義足もまたスケルトンの象徴であり、それらをつけた人間もまたスケルトンであるとみられる。

【Kenshi】ロールプレイ日記 0-0 キャラメイキング

どうも、すぷらいとです。

本日よりKenshiのプレイ模様を未プレイ向けの若干の解説を加えつつ小説風に展開しながらこのブログにて公開していこうと思います。

Kenshiって何?って人はリンク押してねあわよくば買ってね。

 

store.steampowered.com

今回は初回ということでキャラメイキング。

スタートは奴隷で行きましょう。

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文字見づらいかもしれませんが仕様です。

その名の通り、ホーリーネーション(以下HN)に使われている奴隷です。リバース鉱山というところで掘削作業をやらされる身分からスタートです。開始人数は2人。二人で結託して共に鉱山を脱出しようってところです。

奴隷ということで未プレイ兄貴達はとんでもないどん底からスタートさせられると思うでしょうが、この世界の奴隷は(システム的に言えば)最低限の衣食住の保証と他勢力や外敵からの保護がなされている身分と言えます。黙って働いてりゃ罵声を浴びせられるだけで安全なんです。安心はないかもしれない。

キャラ育成で言えば安全な場所で走り回れたり筋トレできたりピッキング練習がいっぱいできたり等、様々なスキルを安定した環境で上げられるといったメリットがあります。もちろん最終的には逃亡しなくてはゲームが始まらないということを考えるとある程度ゲームになれた人向けになります。あとベッドがないから歩兵にしばかれたあとの回復にいちいち時間がかかる。

高度設定は巣や拠点襲撃の頻度を気持ち上げる形で行きます。

またこのゲーム、ゲームエディターがデフォルトで入っているおかげかMOD制作が非常に盛んで、様々な要素を後付けすることができます。GUIの改善や軽量化はもちろん、アイテムや要素の追加、ゲームシステム改変などなんでもござれです。

以下、スタート時の導入MODを一覧で。

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内容はその都度紹介していきます。キャラメイキングにかかわるMODも入れていますので、今回はそれも紹介しましょう。

 

てはキャラメイキング。

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やたらと設定項目が多い。顔の項目も顔の大きさから鼻や目、口の大きさや位置、高さ等細かく設定できますけどキャラメイキングに不安ニキなので大していじってません。髪と身体だけいろいろいじってます。

因みにこのキャラですが、MODによる追加人種です。美形種族追加MODといいまして、デフォルト種族(人間のみ)の仕様を持った日本人好みの顔を持った種族を追加するというMODです。種族そのものを追加するので最初のキャラメイキングでこの種族を設定する必要があります。このゲーム、ゲーム中容姿変更もバニラの時点であり、最初のキャラメイキング時以外でも出来ますが(しかもタダで)、流石に違う人種にはできないのでデフォの人間からこの追加種族の人間の顔に変更するということはできません。

因みにデフォの人間はこんな感じ。

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うーん……チェンジで。

 

この美形種族はゲーム中も酒場などに雇用可能NPCとして存在しているので増やすことはもちろん可能です。いろいろ探し回る必要はありますが、ウン十人とこの種族だけで組むことも当然できます。

1人目は先ほどの画像の子で行こうと思います。名前は泡。女性キャラは全員さんずいへんの漢字一文字というルールでネーミングしていきます。

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人種はグリーンランダー(の美形種族)。この世界の人間はグリーンランダー人とスコーチランダー人の二種類があり、グリーンランダーは最もポピュラーな人種という位置づけです。左下にある成長補正の通り内政系のスキルにプラスがありますがマイナス補正がないということで基本なんでもできるし何でもできないかもしれないという位置。世界各地に最大の人口を有しています。

褐色銀髪ショートのロリ体系。好きな要素を詰め込みました。主人公格だから当たり前だよなあ?

もう一人はこんな感じ。

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泡と打って変わって高身長かつグラマーな身体にしました。人種はスコーチランダー。グリーンランダーと比べると冒険者気質でそれに関するスキルも伸びやすくなっており(なぜか筋力の伸びがやや悪いけど)、グリーンランダーで伸びやすい内政系スキルにマイナス補正がかかっています。人口はグリーンランダーよりもやや少なく、砂漠などの地域に多く住んでいます。

デフォの肌色は黒人よりも黒いって感じ(画像)ですが、泡とあわせるために最大限白くしました。褐色だな!って感じ。

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名前は沫。二人合わせて泡沫。何か熟語になればいいなって思ってつけました。奴隷身分脱出が泡沫の夢にならないといいんですがねえ。

現時点での目標は決めていません。とりあえず鉱山脱出がありますが、それはどちらかというとこの二人の人生の再出発といった感じなのでひとまずそれ以降の話として。

 

今回はキャラメイキング回で解説みたいな書き下しになりましたが、次回以降は小説形式で画像と脚注による解説を挟みつつ、書いていこうと思います。

 

ホーリーネーションを倒したい、という気持ちは他の奴隷以上だと思う。

それでは

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