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ゲーム中心の雑記。Kenshi奴隷スタートシナリオロールプレイ日記連載開始しました!

【Kenshi】ロールプレイ日記 1-4 砂の海に潜む

「そういえばここはオクランの腕っていう土地名だったのを今思い出したわ。軍事基地もこの近くにあったはず……今更思い出したことだけど」

「またHNのパラディン共が来るってこと?」

「そういうことだ……いてて、ようやく角が戻ってきたというのにまた折られかねん」

「そういや私たちも髪が戻ってきたわね。いよいよ奴隷バレの心配もなくなりそうよ。大きな町に行ってもよさそうね」*1

誰かが設営していったのであろうキャンプ跡地。人気はおらず、あたりに散らばるHNの兵が散らばっているのみである。あれだけ騒がしかった戦場は今砂を伴った風切り音しか聞こえない。

とはいえ、それは今現在の話。HNの兵の巡回ルートにここがあるのならば留まったところで目を付けられるのは想像に易い。

「ところで……泡ちゃんなにやってるの?」

「死体漁り」

「見かけによらずたくましいな……」

「なにかいいものあった?」

泡は休憩もそこそこに息絶えたHNの兵漁っていた。

「鎧は持ち運び難しい……こいつらいいのあんまりもってない。」

「遠征じゃなくて近場の巡回ってところだろうしね。武器だけもっていけばいいんじゃない?」

「うーん……あっ」

鎧の内側を漁っているとメモ帳のようなものを見つけた。

「なにか書いてある……リバース鉱山、奴隷ってあたしたちのことかな」

「メモ帳?なにかしら……」

「銀髪の少女、28800cat、青髪の首謀者、70000cat 必ずとらえろ……?」

泡は目を丸くし、沫は目を細めた。

「賞金首ってことか?」

「賞金首……? お尋ね者?」

「そういうことよ。自首するかHN滅ぼせば解放されるわ」

「HNを滅ぼす……?」

大国からの高額賞金首。

沫は口調を変えず、元から頭の中にあったかのように続けた。

「まぁでも……しばらくはHNが手を出せないようなところで過ごすつもり。味方ではないけどいくらかマシなところよ」

 

都市連合(以下UC)という組織がある。現大陸の歴史、技術を守り、新たな技術へ発展していく都市の集まり。大陸の東側の砂漠地帯を中心に多くの都市を包括しており、全てまとめて帝国ともいう。幾度にわたって崩壊した帝国の3代目であり、歴史は繰り返そうとされている。

 

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「沫はここの出身なの?」

「このヘフト出身ではないけどね。都市連合は広いけど中心地はこの砂漠地帯なのよ」

大陸の東側から南、多くの都市が属し、その全ての都市に1人の貴族が当主として仕切っている。富を競い、貧困こそ悪徳と宣い、侍らせる戦士の強さが貴族のステータスという価値観の元、明日の飯も保証できない農民との格差を広げ続けている。十数年前の飢饉を端に発する帝国の腐敗の象徴だ。

この国にも奴隷制度はある。ホーリーネーションの奴隷制度とは違い経済基盤を築く国の資源となっており、飢えとの恐怖と隣り合わせの人々の支えになっている。ただ奴隷という人権無視した制度ゆえに主に農民の反乱が絶えず、奴隷制度に異議を唱える人々のテロ行為もあり、国の生命線でありながら国の存続を脅かす火種ともなっている。貴族たちの不満と恐怖のはけ口にも奴隷が使われ、それが反乱やテロを煽る材料にもなり、帝国のもろさを晒す結果となる。*2

更に西にはHNがいる。軍事拠点を構えた大国と一触即発の危険な外交事情もあり、今後の帝国の行く末は指導者の舵取りにかかっていた。

 

「貴族には極力近づかない方がいいわ。難癖付けて農民をクロスボウで射抜いたりする野蛮な輩よ」

「この国も平和に暮らせそうにはないな……」

 

砂漠を横断した沫達は都市連合の首都ヘフトにやってきていた。領地の端に立つ監視塔のような建物に黒づくめの服を着た野盗集団のアジトがある。沫は真っ先にそこを訪れていた。

「ハロー。私たちを盗賊団に入れてくれないかしら?」

「なんなんだお前」

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シノビ盗賊団という組織だ。成り立ちこそ不明だが各都市にアジトを構え、盗品の管理や流通を行っている。基本的にはアジトで過ごしており、たまに街の酒場に数人で飲みに行っていたり、流離っているところを目撃されている。*3


「別にいいが、力を示すために10000cat支払え。それが会費だ」


「1万……これでどう?」


HNの兵からかっぱらった装備と浮浪忍者の村にいたときからの貯金で確保できていた。こんなところで邪魔者は役立っていたということだ。


「結構。アジトの設備は自由に使ってくれ。ようこそシノビ盗賊団へ!」

 

沫と盗賊団のボスが握手をした。

 

「ところで頭領さん、ここから手っ取り早く稼ぐにはどうしたらいいのかしら?」

「真面目な奴なら回りの鉱山から鉱石を採取したりスキマー*4の爪を売ったりしているが、やっぱり店や貴族の家に忍び込むのがいいだろうな。盗品の売買ならまかせてくれ」

「沫……あたしの得意分野って?」

「そういうことよ。憲兵に見つからないように盗みを働いてお金を集めて。ここで狩り拠点を作ってお金と資材を集め、街の外に私たちの拠点を作りましょう」

「あなたの計画って……そういうことか。それで仲間を集めて……」

「とりあえずHNに奴隷解消後のお礼参りといこうかしらね」

沫の狙いをまとめよう。

ヘフトの空き家を買ってそこに資材や装備品、人材を蓄える。いい具合になったらこの砂漠地帯のどこかに拠点を立てる。施設と人材の拡充を進め、兵力が充実して来たらHNへ戦争をふっかけるということだ。しばらくはUCの街々に忍び込み、金を稼いでいくことになる。そのためにはある程度UCの圧力に耐える必要はあるが、HNを経験した彼女らからしたら女性やシェクというだけで迫害されたことを考えたとき、幾分かマシと考えた。

「盗みか……どうしてもやらなくてはならないのか」

「それは泡と私がやるわ。あなたは戦力として一番期待したいから、ボディーガードを頼むわ。あとは街の外の鉱山を利用して身体を鍛えるのもいいかもよ」

「それでいいなら助かる。正直盗みはいい気持ちがしなかったが……HNに復讐を考えてる私が何言ってるんだろうな」

「私達は正義の味方にはならないわ。流れ者でしかない私たちの居場所のため、邪魔になるものは全て滅ぼす。差別と暴力、迫害だらけのこの世界で自分を守るために私はこの組織を完成させるわ!」

「……」

「……」

UCも安泰ではない。むしろHNよりも内憂外患がはっきりとした事情を今も昔も抱えている。自国民の腹も満たせない国が盤石なわけがない。むしろ踏み台にして成り上がろうとすら考えている。

「あたしは……沫がいなかったら今もリバースにいた。あたしも自分が安心できる場所が欲しい。沫に協力する」

「私も……あなたの行動がなければ今頃HNの兵共に転がされていた日々だ。私の命はあなたのものだ」

2人の言葉を受けた沫は深く呼吸をする。かつてないほどの高揚感。荒唐無稽な夢が少し届きそうな気がして、眩暈すら覚えた。

「私はこの大陸で無様に生きたくない。誰かに使われて生き延びるくらいならスキマーの餌になる。2人もそのつもりなら、私についてきて!」

「もちろんだ」

「うん」

荒れた大陸にまた一つ、分子が増えることとなった。

*1:逃走した奴隷であるかどうかバレる可能性は自身の格好による。奴隷になると人間なら男女問わず頭を丸められ、シェクなら角が折られる。各町の酒場にいることがある形成外科医に話しかけるとキャラエディット画面に移り、容姿を変えられるがその時に髪を生やしたり角を戻すこともでき、奴隷バレの可能性が減る。ついでに名前も変えられる。それ以外でも時間経過(元奴隷になってからゲーム内時間で96時間)で容姿が元に戻る。今回のプレイは後者のパターン。

*2:泡と沫に高額な賞金がついたのはリバース鉱山時代に奴隷を解放させまくったからだと思われる。ゲームシステム的にも奴隷の解放は資源の流出と同義で略奪や襲撃よりも大罪として認識される。

*3:盗賊団という物騒な連中だが基本的に敵対することはなく、1万catポンっと出すだけで同盟になれる上に50%オフ商品横流ししてくれたりアジト内のトレーニング器具使わせてくれたり、形成外科が使えるなど恩恵がでかすぎる。中盤以降でも安定した盗賊バックの供給先として使えるなど案外お世話になる。システム上プレイヤーが街で問題を起こすと加勢してくれるが特にUC連中との装備相性が悪く、商人含め全滅していることもあるかわいそうな集団

*4:でっかいカマドウマみたいなやつ。砂漠地帯全体に現れてプレイヤーに敵対する。斬撃ダメの重さから序盤に遭遇するとダウンからの通りすがりの奴隷商につかまって奴隷にされる砂漠特有のコンボを見せつけられる。街付近でスポーンすると衛兵にぼこられて沈黙してることがあるのでありがたく肉をもらおう。取れる食用肉の量は少ないが沸き数の多さから結果的に結構な量を稼げる